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2017年 09月 15日
まだ全部読んでないんだが。 カリフォルニアの丘陵地帯のインディアンは、20以上の部族が、それぞれちがう言葉を持っていて、おたがい境界を保って、石を削ってつくった刀や弓矢で、鹿を獲ったり、川で鮭をモリで突いたり、ドングリのおかゆを主食に、冬になると干した肉などの貯蔵が切れるという以外は平穏に暮らしていたのが、白人の入植者、次いでゴールドラッシュにより、大虐殺がおこなわれ、ここに記された一人の男は、皆殺しにされた部族の最後の生き残りとして、同じ言語を話す者も一人もおらず、身をかくして孤独な潜伏生活を何年も送ったのち、力尽きて人里にさ迷いでたところを、保護される。 これが、1911年。 彼はこの著者の夫である人類学者と出会って、インディアン保護居留地に送られる選択もあったのだが、あえて異なる文明に入ることを選び、博物館に住み、のちには給料をもらって自立するまでになるのだが、5年後に、文明の病、結核に感染して死ぬのである。 彼は本当の名前を明かさなかったので、親しい人たちが、彼にイシ(ヤヒ語で、人、の意味)と名付けた。 彼らは文字を持たなかったが、男の子は少年になると、母親の庇護から抜けて、「男の家」で多くを過ごすことになり、そこで狩りの仕方や、生活の智恵、昔の言い伝え、作法などを学ぶ。 彼が、ひとり生き残ったのち何年も孤独で悲惨な暮らしを生き延びたのは、こうして育まれたものが、心と体の奥に染み込んでいて支えたのだと思えてならない。 この、石器時代から現れた原始人は、当時の北米では大ニュースになったらしい。 この著者は、感情的なものを排して、客観的に、虐殺の歴史、イシの部族の暮らし方、イシが現代文明の中でも、寛容で忍耐強く、知的で聡明な人格を失わずに生きた様子などを記している。 そうして、東洋人のわたしは、このインディアンに非常に近しいものを感じるのである。 と同時に、嗚呼、この国はひとつの文化を失ったかもしれない、明治維新のときに、あるいは敗戦して消費大国に塗りかえられたときに・・と。 ひとつ、ぶっくらこいたのは、イシが川で泳ぐとき、のしで泳ぐ、とあったとき。 わたしがもっとも得意の泳法はのしだったから。 母がのしで泳いでいたので自然に覚えた。 息も乱さず、無駄な力も使わず、静かにいくらでも泳げる。 けれどプールでは誰もやってない。
by mototot
| 2017-09-15 23:03
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Comments(6)
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Kcouscous at 2017-09-16 11:11
これは深く深く心を動かされる本だよね。前に読みました(装丁が違っているけど)。著者夫妻の娘がアーシュラ・ル・グウィンだってことにも感動しました。
むかしアメリカ人の女の子にあやとりをして見せたとき、「それ知ってる、インディアンの人たち(いまなら『ネイティブ・アメリカン』ね)もやる」と言われてものすごくびっくりした。文化がどこかでつながってるんだよね。 「のし」って知らなかったけど、motoさんとお母さんもその泳法ができるとはすごい!! やっぱりどこかでつながってるんだ。
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mototot
at 2017-09-16 15:16
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♡ Kcousさん
うん。ゲド戦記はじつはまだ読んでないんだけど、イシの影響を強く受けたと聞くね。 彼らはまた、火葬だし。手先が器用で限られた道具を工夫して大事に使うとか。 元はモンゴロイドだからつながっているんだろうね。 「のし」には、マジすか、と驚きました。 なんかね、ドンくさいモンゴロイドのアイデンテティでよかったんじゃんと、目の開かれる感じ。
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オ 寒
at 2017-09-17 11:21
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月並みだが、物質を有り余るほど得るという、文明は、たくさんの豊かさ・しなやかな人間の技を捨ててきたものな。
アイヌも人間って意味だし、インディアンもどこかDNAが俺たちとつながってるな・・色濃く。 PS/タカアシガニは古式泳法で泳ぐ?
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mototot
at 2017-09-17 17:05
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♡ オ寒さん
原始とか、野蛮、未開、という見方も、一方的な価値観だよね・・ タカアシガニ? ミズスマシと呼んでくれいっ
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bumidayat at 2017-09-18 19:19
こんにちは、Sariと申します。
イシさんは、石器人というより、日本の縄文人のような気がします。 太古に移動した私達のルーツと同じ人々に思いを馳せました。 この本、是非読みたいです。
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mototot
at 2017-09-18 21:13
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♡ Sariさん
初めまして、コメありがとうございます。 縄文は土器だけどこの人たちはカゴ編みがすごいらしいです。 ぜひ読んでみてくださいね。 手本のない、どう振る舞っていいかわからないような事態、異質の文明の中に、一人で入った彼の振る舞いがまた、尊敬に値するのです。
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